最近、エロ同人が好評で、それを一般漫画に流用した作品を読む機会があった。《彼女の友達》だけ作家がエロ同人上がりなだけで作品はエロ同人が原作では無いが、基本的には同じ事である。
カラミざかり
今回の作品群だと極めて《まとも》な部類に入る。元々は、主役が友人Aと一緒にヒロインと女友達Bの4人でセックスする流れになるが、主役が惚れてるヒロインが友人Aと先にセックスしてしまい、好きな女の処女喪失を他の男に奪われた挙句に、清楚な女だと思っていたら比較的に誰と寝る女と発覚して、それでも恋愛感情を捨てきれない歪な男の性癖を描いたエロ同人誌が大ヒットしたので、その設定をほぼそのままに、より一般受けしそうな絵柄の漫画家に変更して連載された作品。所謂《NTR》である。
当然ながら、18禁だった原作に比べたらセックス描写は明らかに減っており見劣りするが、代わりに主役に惚れる後輩の追加や展開など、男女におけるセックスの軽重や温度差なども描かれており、頭ごなしに駄作と断ずる程には酷い作品ではない。
ただ、原作は、結局《自分》は他の男と寝るヒロインに興奮する《NTR気質》だと自覚して、むしろ他の男と寝る事をヒロインに要求して終わるが、これはエロ同人だから許される事であって、一般漫画になった時に純愛としてどう片付けるのだろうか?と楽しみにしていたが、結果は変わらず同じオチだった。
壱応、原作には無いヒロインは母親の過剰な抑圧により自由を求めた結果《尻軽》になった。とか、《主役》が知らない場所で実はヒロインは《主役》と付き合うから他の男と寝るのを拒否する場面が追加されており、それ自体は素晴らしかったが、結局は男女共にNTRを肯定して受け入れて終わる。
自分には〈結局は原作を上手く拡張が出来なかった〉という印象で終わった。
彼女の友達
本作は原作がエロ同人誌だったわけではなく、作者のじゅらがエロ同人作家だったらしい。
絵は綺麗。そして、一般向けながらセックス描写も充実している。しかし、登場人物の言動が支離滅裂で時系列の描写も下手で時間がどこまで飛んだのかもわかりづらく、何でも無い会話の場面ですら無駄に下から煽り女のパンツを描写する、ただのエロ漫画だった。
題名通り《彼女の友達》から言い寄られて困惑しながらも受け入れて寝てしまう男がどうするのか、そういう話を求めると全く駄目な作品。
どこまでも男を肯定してくる彼女と友達。言うなれば洗脳レヴェルにまで至っているベタ惚れ脳死エロゲ女を受け入れられる——むしろ好きならば本作を楽しめるだろう。
誰でも抱ける君が好き
元々はPixivで公開していたエロ同人を一般漫画に展開した作品。誰とでも寝る女《ギャル》と関わると、案外《良い人》とわかり、勢いでセックスしたくなり《ギャル》の《ヒロイン》も喜んで受け入れるが、彼女が尻軽である事には変わらず、主役と寝た後も他の男と平気で寝る《ヒロイン》に嫉妬や反発を抱く男の話。そういう意味では《カラミざかり》と異なりNTRを肯定していない、一般的な価値観の作品である。
ただ、《ヒロイン》以外にも主役と簡単に寝る女が複数人も出現してしまい《ヒロイン》の《尻軽》が埋没してしまい無個性になってしまった。作中でも《ヒロイン》は《尻軽》だと揶揄される場面があるので、作品の倫理観や価値観は一般的であり、その上で《ヒロイン》がどう生きるのか?という所に着目すれば良い漫画である。
しかし、結局は主役が《ヒロイン》以外の言い寄ってくる女と簡単に寝るので、《尻軽との純愛》でも無くなってしまった。
壱応、言葉では自分の恋愛感情はまともだろ言いながら、結局はセックスに溺れてしまう男の浅ましさを描いているので、作品としては誠実な方ではある。
しかるに、セックスをする理由や意味よりも、セックスの量を描く方に指向しているので、自分としてはうんざりして途中で読むのをやめてしまった。
サーシャちゃんとクラスメイトオタクくん
これが最も邪悪だと思う。元々は《ロシア人である美少女の中学生ヒロインがセックス大好きでやりまくる》という100%エロ同人で出来上がっているエロ同人誌が原作らしい。自分はそれと知らず、萌え作品ではあるが、絵は綺麗で構図も豊富で背景もちゃんとしていて漫画のレヴェル自体は極めて高い作品だなと、気軽に読んでいた。
男向けのエロ漫画が大好きで、エロ漫画家を目指してる主役に過剰に擦り寄ってくるあたりは、如何にも《この手の作品》ではあるが、耳年増で実際にはキスも躊躇う童貞処女のギャップ純愛なんだと思って読んでいた。
実際、好きとか愛してるとか言わずに、ある理由で主役を電話で性的に誘惑しようとするヒロインに、主役は今の時代はSNSなどで写真などすぐに流出してしまうからそういう事はやめろ、と至極真っ当な反応をして、そんな誠実な主役に思わず嬉しくなってしまうヒロインなど、その描写は素晴らしいものであった。

しかし、甘かった。ヒロインはエロ漫画を好きな耳年増ではなく、既にセックスを経験済みで、まだそこまでなら事情と展開次第で許容範囲だが、実際にセックスが大好きで、複数の男と平気で寝る倫理観がぶっ壊れた女だと発覚する。しかも、《カラミざかり》や《娘の友達》のように母親からの逃避や反発、《彼女とデート》のように不本意なセックスをして自暴自棄になっているのでもなく、単純にセックスが好きで主役の友達も簡単に寝るヒロインである。
これがエロ同人誌なら良いが、一般漫画のラヴコメで女子中学生がセックス大好きで、それを至極前向きで明るい普通の事として扱い描いてる性癖にドン引き。自分は全くついて行けなかった。
総論
以上、これらを読んで思ったのは、一般作品の中でセックスを描くのと、セックスしか描けないエロ同人が一般漫画に参入しても、それらは等しくないという事。男向けの娯楽作品としてセックスが頻繁に描写される漫画はあって良いが、結局はセックス以外の人生にまつわる価値観が重心に無いと、一般漫画としては底辺に当たるのだなと思い知った。



