ミシェル・ルグランのドキュメンタリー映画

 あんなに気性が激しい爺さんとは知らなかった。もっと陽気な爺さんだと思っていた。陽気なのは事実だが、現場で、あんなにキレ散らかす人だとは。関係者の、態度は最悪で発言は正しい、という遠慮の無い感想が面白かった。

 OP曲が〈ロシュフォールの恋人〉の〈キャラバンの到着〉だった。

 自分が彼を知ったのは、この曲で、三菱自動車のランサーセディアCM音楽。

【原曲】

【4拍子Ver】

 だから、個人的には、この曲が思い入れがあるが、世間的にも、この曲が代表作なのだと改めて思い知った。エンドクレジットの前に終わりを促す曲も〈ロシュフォールの恋人〉だった。

 彼はもともとクラシックを勉強して、その後にジャズに惚れてジャズ中心となったが、考え方は管弦楽的で対位法的。結果論だが、自分が彼に惚れたのも、クラシックの知識と技術をクラシック以外に持ち込んだ作風で、菅野よう子浜渦正志やジェイコブ・コリアーと同じ。自分は決してクラシック至上主義ではないが、バンド編成だろうとヴァイオリンが無いと退屈に感じるし、対位法と管弦楽じゃない音楽の価値は低い。

 それと、彼の映画なので当然だが、彼の作品ばかり流れるが、3拍子(6拍子)が4拍子と同じ比率で聞けたのも良かった。

 自分は新宿で見たが、観客は10人前後。男女比は1:1だった。ミュージカルが代表作な上に、綺麗な旋律が売りの作家だからか、女の需要もしっかり掴んでいたらしい。少なくとも、自分の周囲には彼を知ってる女の知人はいないが。

 彼が使っているメトロノームは、メーカと品番はわからなかったが、恐らくSeikoのクオーツだと思われる。これは、BPMの値は離散的で1桁目を1区切りでは変更を出来ないが、振り子式のメトロノームと同じ感覚で使えるタイプ。ストップウォッチもアナログだった。

 彼がホテルの1室で、パソコンもタブレットスマホも使わず定規と鉛筆で楽譜を書いている姿が良かった。彼の周囲はデジタル機器を使うし、彼もそれは否定していない。しかし、根本にあるのは頭と鉛筆と紙。

 これは経験則だが、アナログで鍛えた能力はデジタルに応用が可能だが、デジタルを使える能力はアナログでは役に立たない場合が多い。だから自分も紙に書いて、デジタルで清書や編集と形に落ち着いた。

 彼の父親は女に対して奔放で結婚を5度した。彼はそれに批判的だったが、彼が入院した時に、妻が〈私のおかげで助かったのよ〉と笑って冗談を言っていたが、彼は愛妻家だったのだろうか? 映画では彼の結婚歴と離婚歴は明かされなかった。

 彼の恩師の話も面白い。出来の悪い生徒はさっさと卒業させて、見込みがある有能には卒業させず、つきっきりで鍛える。そして、彼は5年かけて育てられた。

 エンドクレジットの曲が何か自分にはわからなかった。彼お得意の管弦楽伴奏によるジャズ調の歌で、歌っているのは彼自身だった。サビの大ラスで、ストリングスが全音符以上の長音ソ(移動ド)を弾いていたが、クラシック系の作家はこれを好む。菅野よう子浜渦正志。ポップス系はドが多い印象。

 最後に彼の言葉。

子供の頃に好きだったものがずっと残る。忘れてしまったものは、もともと興味が無かったもの。