【イヴリン嬢は七回殺される】を読んだ感想

ネタバレあり

イヴリン嬢は七回殺される(Gemini画像生成によるキービジュアル)
イヴリン嬢は七回殺される(Gemini画像生成によるキービジュアル)

3/5点

良かった点

  • 設定が凝っている。
  • 8人の視点で目まぐるしく展開するので飽きない。
  • リヴォルヴァーなどVはバ行ではなくヴで書いている。
  • 謎解きパートの段取りに必然性がある。主役が勿体ぶるための設定がちゃんと考えられている。主役ではなくアナという脇役にやらせないと駄目な展開をちゃんと作っている。
  • 読者に設定説明するために披露した失敗例が、後に逆転する鍵になっている熱い展開。

悪かった点

  • 何も新しい知識を得られない。舞台設定は全て雰囲気作りのだめだけで、その時代特有の知識や常識が本筋やトリックに結びつく事が無かった。自分が好きな京極夏彦は妖怪蘊蓄が本筋と情緒に結びつき、森博嗣は理系ネタが本筋と価値観に結びつき、テッド・チャンはSFのあり得ない未来的なギミックがそのまま思想に結びついている。本作はそういった知識と思想の配偶が無い。《薬屋のひとりごと》みたいな幼稚な雰囲気もの。
  • 《ひらがな》が多過ぎる。例えば《もうあなたをとめるものはなにもないんです》
  • 黒死病医師の頭が悪過ぎる。30年間も事件を見ていて共犯説を1度も思い付かなかったとか酷過ぎる。RPGでボスキャラが仲間になった瞬間から雑魚に成り下がる例のアレ。
  • 3点リーダ《……》と2倍ダーシ《——》が併存しているが、例えば沈黙は前者だとか規則があるならわかるが、同じ鉤括弧内で両方あったりルールが曖昧で読みづらい。
  • 役者あとがきで《インセプション》と評価されていたが《プリデスティネーション》《トータルリコール》《メッセージ》とSFでは珍しくない展開を踏襲しているだけで驚く要素が無い。