漫画家や音楽家が若々しい理由は主体的な人生だから

 この記事の理屈で行くと、戦争経験者は生死がかかっているので娯楽作品の作家よりもゾーン(過集中)の頻度は高いのに、むしろ彼らは若々しさよりも老けている。当然である、毎日、毎秒、自分は死ぬかもしれないというストレスに晒されているのだから。

 人間の容姿を若く保つ理由は、主体的な人生を過ごせるか否かである。

 以下は容姿に関わる実験ではないが、若々しさ(幸福)に関係する要素が示唆されている。

 上段の記事は、老人ホームで何もしないグループと、掃除など義務はあるが役職や程度に関しては選択の自由があるグループを比較した場合、後者の方が幸福度が高いという実験。

 下段の記事は、鼠を水槽に閉じ込めた場合、助けが来ない場合は10分程度で溺れ死に、助けられるが水槽に閉じ込められるのは変わらない場合は数時間も泳ぎ続ける、という実験。

 これらが示唆しているのは、①主体的な行動は幸福を齎す。②目的や報酬が明確か不明かで生死に直結する行動の維持の程度に優位な差がある。

 つまり、漫画家や音楽家が比較的に若々しいのは、職業の選択も仕事の内容も主体的であり、金銭以外の〈やりがい〉という脳内報酬を毎日獲得しているからである。

 もしもゾーン(過集中・没頭)が若々しさの条件ならば、戦争経験者の老け具合の説明にならない。

 恐らくだが、冒頭の記事を書いた人は自分で日常的な創作をした事がないのではなかろうか。漫画家や音楽家が、毎日家族や友人を人質に取られて拷問されて強制的に創作をしていたら、ゾーンであろうがなかろうが若々しい容姿を維持は出来ないのではなかろうか。

 娯楽芸術関係の仕事をしている人間は、会社員よりは仕事を引き受けるかどうかの自由、金銭よりも優先した価値観で人間関係を選択する自由、仕事Aをしている間に仕事Bを思いついたらBに関する行動や思考を選べる自由、売り上げの個数や金額よりも異なる価値観を主張が出来る自由、作品にどんな知識や技術や手段を使うか選択する自由、などなど明らかに自由度が高いから彼らは若々しい。

 その中にゾーン(過集中・没頭)が関与しているのは間違いないが、毎日強制的に殺し合いをさせられて眼前の敵を殺す事に神経そう張り詰めるのと、年収は平均よりも少なくて良いから自由意志で選択して売り上げを気にせず作品を作り続けている娯楽芸術の作家を比較すれば、どちらが若々しくいられるかなど自明ではなかろうか。